双状になった、折れた幹から新芽が立ち上がって何本も芯がある木の事です。何本か立上った幹のうち、木の中心に近いものが一番大きくなっている気がします。また、その一番大きな幹が最初に枯れ始めることが多いように感じます。そんな木の伐採の依頼があった場合、つまり、双状になった幹の内1本でも枯れている木の伐採の仕事をすることになったときに注意していることは、分岐した箇所の状態をよく確認することです。多くの場合は幹に腐朽が診られます。浮皮になっていて確認しずらい場合がほとんどなのでよく確認します。幹の分岐箇所はほとんど癒合していないのに加え、腐朽しているなんて!
木の見た目はホウノキのようですので、仕事しにくいけどできるな~。と思ってしまいます。もちろん最初に考えるべきことは登らずに作業する方法です。伐倒できないか、高所作業車やクレーン車が使えないかなどです。どれもダメな場合は足場を作ることです。とにかく登ってはいけません。それでも仕方ない場合は残った幹に横物の棒を付けて階段状にして作業することができますが、今まで足場を組めない現場はありませんでした。ただし車も入らないので足場の設置より搬入・搬出代が掛かります。見積もりを間違えて足場の設置代が無くて赤字になっても、いい勉強だと言い聞かせています。どうにかなると思って見積すると時々バチが当り、反省することになっています。
2018/12/10
飛騨高山の雪は湿気が少なくさらさらで、軽い雪が降ります。雪の量もそれほど多くありません。しかし平成26年(2014年)の12月に重い雪が降りました。その時、多くの木が被害を受けました。そのため翌年、断幹した木の数量は219本になりました。(お陰で開始から3週目で7㎏体重が減り健康体となりました。)その際色々な種類の被害木がありましたが、幹折れした木の多くが、過去の樹冠頂部の幹折れ箇所から数本分岐した幹でした。大径木では昭和56年の大雪で折れた後分岐した幹であることが推察されました。
本来、入皮で2本立ちのように双状になった木の伐採(断幹)の時には、その2本をラッシングベルトなどで断幹中に幹割れしないように締付けて作業します。しかし、片方が落下して欠損している場合の断幹は締付けることができないため大変危険です。まず検討するのは「伐倒できないか」です。次に「高所作業車やクレーン等が使用できないか」、「幹折れしないようにケーブリングできないか」、などです。どうしても昇らなくてはいけない時は、断幹方向幹割れする方向にリギングはしてはいけません。加えて幹に力が掛らないように地上に幹を激突させ、飛び跳ねを防止するセッティングを検討したり、周囲に木があればトランスバースを検討するなどが必要です。繰り返しになりますが、まずは登らない方法を考えることが必要です。登りたくなるのは高い所が好きなのだろうか?馬鹿なのか?ついつい登ろうとしちゃいます。
追加:ケーブリングした木を断幹する際は、ケーブリングした上に枝や幹が接触したり、枝の場合はケーブリングの上に乗らないように注意しないといけません。枝を外しに行くのは危険で大変ですし時間も掛ります。ケーブリングしている上に幹が落ちてその衝撃で幹折れしたら、幹と一緒に地面に真っ逆さまです。加えてケーブリングが必要な弱い木の場合、ケーブリングを引っ張りすぎると断幹の衝撃で反対側に折れますな。
2018/12/03
断幹の質問をされました。自分では意識していませんでしたので、書き留めることにします。質問の内容はスギの断幹の写真を見ていて、「断幹は下枝を打ってトップカットして断幹してゆくのか?」というものでした。「あ~、そうですね。」と言いつつ、前回、前々回の断幹はトップを先に落としてから、枝を撤去して断幹をしたな~。と思い出しながら、「普通はそうしますけど状況によります。」と答え、前々回トップを落としてから断幹したことを話しました。そうした理由は、事前確認の時に伐採する木の隣に住む方とお話した際に、昨年は良くこの木の周りにミツバチが飛んでいるのを見たな~。と何気ない一言がきっかけでした。それ以前に2回木を見に来ていましたが、木に穴などは見つけることはできませんでした。しかし、ミツバチがいるということは空洞がある可能性があることがここで分かりました。ちなみに木は樹高46m、直径1mの木2本でした。そこで、先にトップを落とすことにしたわけです。方法は周囲の木を利用したトランバースとなるように設置して牽引しながら下枝の上に載せながら吊り降ろしました。ちなみに、案の定空洞でした。
その他の理由でトップを先に降ろす状況は、トップが枯れている場合や、風を考慮した場合です。「風を考慮」の理由をもう少し詳しく書くと、通常、断幹のトップカットは中坪造園では午前中に行っています。理由は午後から風が出ることが多いためです。特に川の近くなどは事前に木を確認した際には必ず風も確認します。今更ですが、木は枝で風の影響を打ち消すように動くことでバランスを取っています。極度に枝打ちした木が幹折れするのを見ればよく分かります。風だけで幹折れするリスクがあるのに加え、100㎏の人間がそこにいてトップカットする。ロワリングデバイスやタグラインの操作が未熟であれば危険はますます急上昇です。長くなりました。トップカットについてはまた別に書き留めることにします。
2018/11/26
庭師も山師も木の管理をすることも仕事の一つである。庭師と山師の仕事の境は、神社、仏閣の杜の内と外となる。実際は、庭師も庭石を山から出す準備として冬には山の木を伐りソリで木を出すが、それを生業としてはいない。
海外では、アーボリストとフォレスターなのかな?アーバンフォレストはアーボリストの仕事でよいのかな。そう言えば、今年の4月にニュージーランドのウィンテックを卒業した方が訪ねてきた。せっかくなので、「アーボリストとは日本語で説明するとなんですか?」と聞いてみると、答えは「樹木医かな~。」でした。日本のイメージは伐採屋さん?あまり良くないな~。
2018/11/19
庭師として木をみる時と樹木医として木をみている時には違いがあります。庭師の時は情景を作る一部としてみているので、樹勢をコントロールしようと考えています。通常は樹勢を低下させて葉を細かくしたいと考えることが多く庭の中での納まりを意識しています。樹木医の時は対象の木そのものを見ています。果樹園を営む方、植木(苗木)生産をされている方、森林公園を管理する方や、林業の方にもそれぞれ目的があり、それぞれが違う見方をしているようです。大変興味があることです。例えば腐朽について考える時、庭師は腐朽も情景の一部として見ます。一方果樹の方は果実の収穫量、つまり生活に係るので庭師よりも腐朽についてはシビアな問題です。実際20年ほど前に熊本のミカン農家を訪ねた際、枝の剪定痕に市販の防腐剤に墨汁を混ぜていることお聞きしたことがあります。樹木生産の方からは葉面散布に酢と焼酎を使用されるお話を伺ったりもしました。木を扱う人の目的に応じた経験からくる知識。これは本で得ることのできない貴重なお話です。そんなお話を聞いている時は幸せを感じます。
2018/11/17
囲炉裏ばた会議Part.3で、情景という言葉を使ったが、景色、風景という言葉とは使い分けをしている。間違うと困るのでネット検索してみると自分で書こうとしたことよりよく表しているので、Kotoログから引用すると、「情景」には「心にある感情を生じさせる風景や場面」という意味があり、「心を通じて感じ取る景色、心に何かを感じさせる風景や場面」を表す語となっていました。つまり、景色、風景を作り出すのが作庭ではなく、情景を作り出すことが庭を築(ツ)くことではないだろうか?その情景を作り出すには、「間」や「余韻」や「遊び」を巧みに使う技術も必要ですね。という意味です。
2018/11/13
庭の作り方の質問
その方は既に亡くなられましたが、ある旅行に同行し庭を眺めている時、「庭を築(ツ)く時はどうしたらいいですか?」と質問したことがある。今思えば馬鹿な質問でお恥ずかしい限りですが、その時はせっかくの機会なので何か質問しなければという焦りもあって、こんな質問になったのです。その漠然とした質問の答えは、「好いたように作ればいいんや。」でした。9年前の事です。その時は、答えて頂いたことに感謝し「そういうものか。」「とにかくそうなんだ。」という思いでした。
それから庭のお仕事を頂くこともあり、その時のことを思い出すことがありました。お訊きしたかったことは個々の技術的な事でもなく、庭の形状の事でもありませんでした。今になってみれば、私の訊きたいことは全て承知の答えになっています。つまり自分の持っている「もの」が全てと言うことです。「もの」と言うと分かりにくいですが、心動かされる感覚というか、感じ取ることができる心情のようなものです。もっと言えば、暑いとか綺麗とか直接的な感覚ではなく間接的に感じる感覚です。またそこから浮かぶ情景です。例えば、楓の揺れる青葉に涼しさを感じたりしますし、料理に添えてある葉からも情景が浮かびます。
庭を築(ツ)くということは、「間」や「余韻」や「遊び」を巧みに使うことによって情景を作り出す。また、見る位置や見る人によって浮かぶ情景が違うような仕掛けをしたりします。自分が感じることが出来なければ作ることはできない。「何となくいいな~。」という庭の良さは、どの箇所の仕事が丁寧だ、木が綺麗だ、も大切ですが見てわかる良さだけではなく、感じることができる良さなのかもしれない。庭も見に出かけると、以前とは違う感じを受けるのは、以前の自分とは違うからなのかもね。
2018/11/12
「剪定」より「手入れ」の方が木を優しく扱っているような気がして好きです。検索してみると、剪定は「樹木の枝を切り、形を整えたり、風通しを良くする事。」手入れは「よい状態に保つために、整えたり補修して、手を掛けること。」やっぱり「手入れ」の方が好きかな。
2018/10/29
木に登る前には、ツリーインスペクション(木の点検)が必要とされている。それは過去に起きた事故の経験から事故を未然に防ぐために必要だからである。もちろん登る前にはインスペクションは行っている。頭ではわかっている。事故例も知っている。しかし形だけのインスペクションになっていないか時々気を付けている。ここでは根のインスペクションについて書こうと思う。
直径1m程のニセアカシアの枯枝(直径50㎝程)がプレハブの上に張出し落下の危険があるため撤去を行った。木の様子は、全体に樹勢の低下を感じることはない。枯枝がところどころに見られる。根元が確認できない程根元付近からの萌芽が多い。作業はプレハブを壊さないように、枝をコントロールしやすいように小さして吊り降ろす作業を繰り返した。大枝以外の枯枝も同様に撤去し作業を終えた。次の日の夕方台風の風で倒木した。根返りではなく根元でポッキリ。根元部分は白色腐朽で生きている箇所は、幹の外周部分幅30㎝、芯に向かって15㎝であった。正直よく立っていたな~。が感想。今回プレハブを壊さないように小さく吊り降ろしたが、下に何も障害物がなくまた早く作業を終えようと大きく切り落としていたら樹上作業中に倒木した可能性は大きい。また作業内容が伐採であったら、枝を落としている途中で重心のバランスを崩して倒木していたかもしれないし、断幹中に倒木した可能性もある。本当にラッキーであった。しかし、ラッキーで作業していては命がいくつあっても足りない。もちろんこの時も事前のインスペクションは行っているが何が足りなかったのか。ニセアカシアは腐朽が入っているかもしれないと腐朽を疑うこと。萌芽枝や胴吹枝等インスペクションの支障となる不要な枝は事前に取り除くこと。白色腐朽は目視だけでは発見しずらいので、鉄の針を根元に差し込んでみたり、木づちで叩いてみて柔らかくなっていないか確認すること。根元を掘り越してみること。その後はこの経験を生かしてインスペクションしてます。
長くなっているので、他の例で気を付けている事をなるべく簡単に書き留めます。
アカマツ。アカマツの枯木撤去の仕事の多くはスパイクが利かないほどの木であり場合が多い。その時は根元部分の腐った部分を掘ってアカシ(樹脂が固まって固くなった部分)の太さを確認します。根元ではありませんが、アカシに関連してアカマツの時に気を付けているのが枯枝です。アカシで固くなった尖った枯枝はスイングバックでケガをするのが嫌なのできれいに取り除きます。
木の根元に側溝があり、周りが湿気っている場合や、下水道工事のあった場合も気を付けてます。前例の場合は側溝側に倒木することが多いように思います。
根元で二股になっている木は、一方が枯れて撤去した場合残ったもう片方が倒木する可能性があること。また、生きている一方を撤去した場合は、撤去後残ったもう片方の木が枯れることがあります。なぜそうなるかは分りませんが、木を付けています。
とりあえず、今回ここまで。
2018/10/22
古書~飛騨の灯籠
「築山庭造傳」などの古書に紹介されている灯籠の中に、飛騨固有の灯籠として伝えられている灯籠(宗和形、遠州形、飛騨雪見形)のうちの2つの灯籠、宗和形と遠州形が紹介されています。現在発刊されている庭の書籍で紹介されている宗和形とは形が違っています。飛騨には古書にある宗和形の灯籠が数は少ないですが現存しています。飛騨の柔らかい地石で作られているため、長い期間風雪に耐えられないことも数が少ない理由だと思います。
宗和形の灯籠は小さく派手さもありませんが、何か引き付けられる魅力がある灯籠です。以前、大学教授が鎌倉時代の灯籠が欲しくてガマンできなくなり、夜こっそり盗み出して御用となったという記事を拝見しましたが、気落ちは分ります。引き込まれないように注意が必要です。
2018/10/15
中坪造園有限会社 〒506-0818 岐阜県高山市江名子町1749番地 TEL/0577-33-0361 FAX/0577-35-2828