中坪造園有限会社
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デンドロサービス樹木管理事務局

備忘録

庭師の冬仕事

飛騨では冬には雪が降り積もるため、庭仕事がない。全国どこでも庭師は冬場の仕事は薄いのでないかと想像します。京都へ出かけると冬に施肥の仕事をしているのを目にします。穴を掘り、振るいに掛けて石を取除き、肥料と混ぜて埋戻す。根気よく丁寧な仕事をしています。長い時間をかけて冬仕事を作ってきたんだろうなと感心します。飛騨では今まで冬場に何をしてきたかというと、まず道具直しやワイヤー編み、庭を管理させて頂いているお客さんの家の屋根の雪降し、春に山から石出しをするための準備として石出し箇所の伐採と木出し、木出しはソリに乗せて春に木を出せるように車が通る道まで出しておきます。車の無い時代は石出しも冬場にソリに乗せて出していました。私は冬の石出しは経験していません。車がある時代に生まれたので。そうやっているうちに春がやってきます。狭い飛騨でも地域によってソリの形が違い、知っているのは3種類です。

安衛則の伐木作業等における危険防止で、木馬運搬及び雪そり運材に関する規定を廃止とする改正案が出ていますけど、ソリで木を出すときにどんな影響があるのだろう。

2019/02/04

庭師と山師の仕事境

庭師も山師も木の管理をすることも仕事の一つである。庭師と山師の仕事の境は、神社、仏閣の杜の内と外となる。実際は、庭師も庭石を山から出す準備として冬には山の木を伐りソリで木を出すが、それを生業としてはいない。

海外では、アーボリストとフォレスターなのかな?アーバンフォレストはアーボリストの仕事でよいのかな。そう言えば、今年の4月にニュージーランドのウィンテックを卒業した方が訪ねてきた。せっかくなので、「アーボリストとは日本語で説明するとなんですか?」と聞いてみると、答えは「樹木医かな~。」でした。日本のイメージは伐採屋さん?あまり良くないな~。

2018/11/19

庭師と樹木医

庭師として木をみる時と樹木医として木をみている時には違いがあります。庭師の時は情景を作る一部としてみているので、樹勢をコントロールしようと考えています。通常は樹勢を低下させて葉を細かくしたいと考えることが多く庭の中での納まりを意識しています。樹木医の時は対象の木そのものを見ています。果樹園を営む方、植木(苗木)生産をされている方、森林公園を管理する方や、林業の方にもそれぞれ目的があり、それぞれが違う見方をしているようです。大変興味があることです。例えば腐朽について考える時、庭師は腐朽も情景の一部として見ます。一方果樹の方は果実の収穫量、つまり生活に係るので庭師よりも腐朽についてはシビアな問題です。実際20年ほど前に熊本のミカン農家を訪ねた際、枝の剪定痕に市販の防腐剤に墨汁を混ぜていることお聞きしたことがあります。樹木生産の方からは葉面散布に酢と焼酎を使用されるお話を伺ったりもしました。木を扱う人の目的に応じた経験からくる知識。これは本で得ることのできない貴重なお話です。そんなお話を聞いている時は幸せを感じます。

2018/11/17

景色と情景

囲炉裏ばた会議Part.3で、情景という言葉を使ったが、景色、風景という言葉とは使い分けをしている。間違うと困るのでネット検索してみると自分で書こうとしたことよりよく表しているので、Kotoログから引用すると、「情景」には「心にある感情を生じさせる風景や場面」という意味があり、「心を通じて感じ取る景色、心に何かを感じさせる風景や場面」を表す語となっていました。つまり、景色、風景を作り出すのが作庭ではなく、情景を作り出すことが庭を築(ツ)くことではないだろうか?その情景を作り出すには、「間」や「余韻」や「遊び」を巧みに使う技術も必要ですね。という意味です。

2018/11/13

囲炉裏ばた会議 Part.3

庭の作り方の質問

その方は既に亡くなられましたが、ある旅行に同行し庭を眺めている時、「庭を築(ツ)く時はどうしたらいいですか?」と質問したことがある。今思えば馬鹿な質問でお恥ずかしい限りですが、その時はせっかくの機会なので何か質問しなければという焦りもあって、こんな質問になったのです。その漠然とした質問の答えは、「好いたように作ればいいんや。」でした。9年前の事です。その時は、答えて頂いたことに感謝し「そういうものか。」「とにかくそうなんだ。」という思いでした。

それから庭のお仕事を頂くこともあり、その時のことを思い出すことがありました。お訊きしたかったことは個々の技術的な事でもなく、庭の形状の事でもありませんでした。今になってみれば、私の訊きたいことは全て承知の答えになっています。つまり自分の持っている「もの」が全てと言うことです。「もの」と言うと分かりにくいですが、心動かされる感覚というか、感じ取ることができる心情のようなものです。もっと言えば、暑いとか綺麗とか直接的な感覚ではなく間接的に感じる感覚です。またそこから浮かぶ情景です。例えば、楓の揺れる青葉に涼しさを感じたりしますし、料理に添えてある葉からも情景が浮かびます。

庭を築(ツ)くということは、「間」や「余韻」や「遊び」を巧みに使うことによって情景を作り出す。また、見る位置や見る人によって浮かぶ情景が違うような仕掛けをしたりします。自分が感じることが出来なければ作ることはできない。「何となくいいな~。」という庭の良さは、どの箇所の仕事が丁寧だ、木が綺麗だ、も大切ですが見てわかる良さだけではなく、感じることができる良さなのかもしれない。庭も見に出かけると、以前とは違う感じを受けるのは、以前の自分とは違うからなのかもね。

2018/11/12

囲炉裏ばた会議 Part.2

古書~飛騨の灯籠

「築山庭造傳」などの古書に紹介されている灯籠の中に、飛騨固有の灯籠として伝えられている灯籠(宗和形、遠州形、飛騨雪見形)のうちの2つの灯籠、宗和形と遠州形が紹介されています。現在発刊されている庭の書籍で紹介されている宗和形とは形が違っています。飛騨には古書にある宗和形の灯籠が数は少ないですが現存しています。飛騨の柔らかい地石で作られているため、長い期間風雪に耐えられないことも数が少ない理由だと思います。

宗和形の灯籠は小さく派手さもありませんが、何か引き付けられる魅力がある灯籠です。以前、大学教授が鎌倉時代の灯籠が欲しくてガマンできなくなり、夜こっそり盗み出して御用となったという記事を拝見しましたが、気落ちは分ります。引き込まれないように注意が必要です。

2018/10/15

囲炉裏ばた会議 Part.1

ネタが思いつか居ないので、以前、岐阜県緑化協会の協会報に寄稿を依頼され苦し紛れに「囲炉裏ばた会議」として書いたものがあるのを思い出し、簡略し書き留めることにします。「囲炉裏ばた会議」とは私の部屋には囲炉裏があり、つまみを炙りながらお話をする文化的な変人会が催されます。次の日には覚えていない酒の席のヨモヤマ話のつもりで命名しました。

フランス~古書

会社に1通の履歴書が郵送されてきました。郵送元はフランス。???その後メールも届きました。履歴書の送り主は地中海沿岸のカンヌとマルセイユの間にあるメリーという町に住む31歳の青年からでした。彼は日本庭園について興味があり現在独学で「須弥山」について勉強中との事でした。また日本で日本庭園のお仕事をしてみたいとの事でした。結局就職には至りませんでしたが、「はっ。」とする出来事でした。

日本にいて、しかも日本庭園に関する仕事に就いているのに。勉強不足や~。というわけで以前買い集めた庭に関する古書、解説書、図鑑、仏教書などを引っ張り出してきました。なんとも懐かしく思い出すことがありました。20数年前、名古屋の古書店をまわり「築山庭造傳」を見つけ、値段を見てびっくり!16万円!あえなく高山に退散したこと。買うだけで賢くなったつもりで読んでいない本の数々。購入できない本は、国会図書館で特別閲覧中のものをダウンロードしたりと勉強するつもりでいた事など。懐かしい。現在ネットオークションで安く出品されています。確かに解説書を買えば用は足りますが、ついつい読めない古書をしかも同じものも購入してしまいます。20数年前の反動ですな。もっと言えば、大阪市立大学のゼミから各種作庭書の原文データと現代語訳データが公開されています。購入はただの物欲です。反省しています。

2018/09/03

石積み(乱積み)

 

 

 

 

 

 

石積は地方によって積み方も呼び名も多少異なるが、飛騨で自然石による石積というと大きく3種に分けられる。写真左から順に、乱積み、控え積み、野面積みである。

乱積みは、一般に高さ2.0m以内で施工する。石を1段~2段(3段)に重ねる。1段は一つ石と呼び、石積の始めと終わりは一つ石である。一番下に据える石を根石と呼ぶ。根石の地面に埋め込んだ深さを根入れと呼ぶ。根石は根入れを除いた地表面に出る高さは石積高の半分以上にする。また個々の石の重心が一方向にならないようにすることで石積の景色が良い。配石は、一つ石と2段との配置と、根石の高さが一定にならないバランスが大切。石積を横から見た時、一番上(天端)の石の据え方を見ると手間の掛け具合がよくわかる。天端の石が石積みの勾配まで点又は線で出ている石積の方が見た目もよく、手間も掛かっていて、使用している石も大きく、技術的にも良い石積と言える。

石積みを依頼する際は、依頼する予定の会社が過去に施工した石積を必ず確認してから依頼することをお勧めする。ポイントを挙げるのは難しいが、感覚的に安定感があり、美しいもの。また横から見て天端の石が勾配まで出ているもの。コンクリートが目に見えるように使用していないことですかね。

 

2018/08/13

庭師

飛騨では、お客さんから「庭師さん」と呼ばれる。

昔の庭師は誇りも、おごりもあったようだ。

昔は仕事が完成し主人が職人を招いて宴会を催す際、その宴会の席順が決まっていた。上座の主人。その主人の隣が庭師。両脇に大工、左官、と続くわけである。つまり庭師が偉いという話だ。自分が若い頃聞かされた、「昔は字の持つ意味を大事にしていた。”庭師”の”師”は位が高い字で、昔は”師”の付く職種は”庭師”と”医師”くらいなものだった。」といった話、また、年配の大工の方と現場で会って、「若い頃、庭師に大工ごときが・・・と言われたことが悔しかった。」の類の話。職業差別の話だが、視点を変えれば見習う点はある。仕事に誇りをもって向き合っていて、よく勉強をしていた。庭や木は勿論、骨董や美術品、世間の動向に至るまで主人に合わせて話ができる術も知識も持っていた。見習いたくないこともある。もっと昔の江戸時代は、出入りしている家の事情を奥方よりもよく知っていて、お家の大事には真っ先に口封じのため殺されるのも庭師であったようだ。

庭師。面白い仕事だと思う。

飛騨では「山師」というステッカーを付けた車を見かける。「山師」にはバクチ打ちの意味があるので現在使わない言葉だと聞いたが、「山師」ステッカーにはそれもひっくるめて「山師」愛を感じる。

庭師も山師も絶滅しませんように。

2018/07/23

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